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琵琶湖北湖の細菌量 過去30年間で5分の1に減少

2021.11.18

滋賀報知新聞より

http://www.shigahochi.co.jp/info.php?type=article&id=A0035332

 

 

滋賀県琵琶湖環境科学研究センター(大津市)と国立環境研究所は、琵琶湖の有機物の循環の特性を探る研究プロジェクトで、1986年と2016―17年の水中の細菌の増減を比較したところ、琵琶湖北湖では、この30年間で細菌がおよそ5分の1まで低下したことを明らかにした。

 

かつて富栄養化していた琵琶湖では過去30年間で水質改善が進んだが、プランクトンやバクテリアなどの生物が取り込んだリンも測定する総濃度のリン濃度は富栄養化前の水準に戻っておらず、「琵琶湖に流入するリンを減らしたのに、思ったほど数値が落ちていない」のが現状だった。
一方で、水中に溶け込んでいるリン酸イオンの濃度は、顕著に減少しているのも事実。水質浄化の状態を知るため、リンを栄養源とする細菌の量を測定するには、放射性同位体を用いるが、放射性物質の規制が厳格な日本では湖沼での測定は難しかった。
そこで今回の調査では、放射性物質でない安定同位体の指標を用いる新たな方法を導入して、北湖で細菌の生産量(増殖状況)を測定した。この方法で得られた2016―17年の測定結果を、1986年に放射性同位体を用いて測定された結果を比較したところ、細菌の生産量に約5倍の違いがあることが明らかになった。
これについて県琵琶湖環境科学研究センターは、「琵琶湖水中のリン濃度によって植物プランクトンが減少していることは、これまでも知られていたが、この研究によって細菌にも大きく影響していることが分かった。このことは、水中の栄養の減少による細菌類の減少だけでなく、細菌類の捕食を起点とする湖水中の微生物の食物連鎖、ひいてはそれらを捕食する大型の生物群にも影響がある可能性を示している」とした。
一方で、アユの不漁の関連性については、「食物連鎖のシミュレーションモデルの計算から、琵琶湖のリン濃度の増減がただちにつながるものでない」と、否定している。
この研究成果は、日本陸水学会が発行する学術誌に掲載され、2021年度の「日本陸水学会論文賞」を受賞した。

BRUSH

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